円安や生活を苦しめる物価高が是正されるのか、注目される。一方で景気を冷やす恐れもある。
日銀は今後も市場や物価の動向に、きめ細かく目配りしていかねばならない。
日銀は19日、金融政策決定会合を開き、政策金利を現行の0・5%程度から0・25%引き上げ、0・75%程度にすることを決めた。9人の政策委員全員が賛成した。
利上げは1月の会合以来となり、政策金利は1995年9月以来の高水準となる。
植田和男総裁は会合後の会見で、米国の高関税政策が日本経済に及ぼす不確実性が低下していることや、来年の春闘も賃上げの継続が期待できることなどを、利上げの理由に挙げた。
日米の金利差から円安傾向が続き、輸入品の価格上昇が物価高の一因となっている。家計を圧迫する物価高騰は見過ごせない。
消費者物価の上昇率は3年8カ月連続で日銀の目標である2%以上で推移している。過度なインフレの芽を摘む意味で、今回の利上げは妥当な判断と言えるだろう。
日銀は0・75%程度の金利は依然低く、緩和的な金融環境は維持され、景気が冷え込むことはないと見込んだようだ。
注目されるのは、植田氏が今後も経済や物価が想定通り推移すれば「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整する」と述べ、利上げを継続する方針を明言したことだ。
日銀としては、利上げを続ける姿勢を明らかにし、行き過ぎた円安基調の改善を図る狙いがあるとみられる。
だが、19日の外国為替市場は円安が進んだ。今後の利上げを巡る植田氏の姿勢が慎重だと受け取られたようだ。日銀は今後も難しいかじ取りが予想される。
国民生活は「金利が上がる時代」へと入った。
預金の金利は上昇するが、住宅や自動車、教育資金などのローンの利息支払いは増える。
国債市場では利上げ決定後、長期金利の指標である新発10年債の利回りが上昇し、終値で2・020%を付け、約26年10カ月ぶりの高水準となった。
金利の上昇は、企業向け貸出金利の引き上げにつながる。企業にとっては設備投資などに影響を受ける恐れもある。特に中小企業の資金繰りが心配される。
日銀は政府と意思疎通を密にして、景気が腰折れしないよう注視していかねばならない。
高市政権は積極的な財政出動をアピールするが、国債の大量発行でさらなる財政悪化に陥れば、その信認は失墜し、円安が一段と進み物価高を招きかねない。
国債の利払い費もますます負担が大きくなる。金利が上がる時代は、政府の規律ある財政運営が欠かせない。
