山根青鬼さんが描く漫画「のらくろちゃん」((c)田河水泡/講談社、森下文化センター提供)
山根青鬼さんが描く漫画「のらくろちゃん」((c)田河水泡/講談社、森下文化センター提供)

 昭和時代の人気漫画「のらくろ」が、連載開始から100年近くたった今も、作者の「最後の弟子」となった90歳の漫画家によって描き継がれている。日本漫画家協会理事の山根青鬼さんだ。故田河水泡から執筆権を継承したうちの1人。「みんなに愛される『のらくろ』を描き続けることが先生への恩返し」と物語を守り続ける。

<のらくろ> 1931年、雑誌「少年倶楽部」で連載が始まり、身寄りのない野良犬「のらくろ」が軍隊に入隊し、活躍する物語。最初は2等卒(2等兵)だったが、徐々に階級を上げ最終的に大尉まで昇進した。自らの境遇にめげず、元気よく出世していく姿が子どもたちの人気を集めた。戦後も月刊誌で連載が再開され、80年まで続いた。執筆権を継承した山根青鬼さんの「のらくろちゃん」は小学3、4年生の設定で、子どもがまねしやすいシンプルな線で描いているのが特徴。

 のらくろを継いだ門下生3人のうち2人は既に他界。自身も8月に「卒寿」を迎えた中、「田河水泡・のらくろ館」がある森下文化センター(東京)のホームページで、3カ月ごとに4こま漫画の新作を発表している。

 1935年、東京・赤坂に双子の兄として生まれた。太平洋戦争末期の45年に母の故郷富山県に疎開。戦後、弟と学校新聞に描いていた4こま漫画が地元紙記者の目に留まり「双子の天才漫画家」として紹介されたことが転機となった。出版社を通じ「神様だと思っていた」田河が訪ねて来た。

 中学卒業後に...

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