日本経済は、活況と波乱がせめぎ合い、多くの課題を抱えて新年を迎えた。不安材料に向き合い、足元を固め、成長への道筋を探りたい。
日経平均株価は昨年10月、初めて5万円を超えた。「責任ある積極財政」を掲げる高市早苗首相の誕生で、経済成長への期待感が株価を押し上げた。
市場では、株高の一方で、円安、債券安となる「高市トレード」が起きた。首相が打ち出す大型の経済対策によって、市場に財政悪化の懸念が広がり、円と国債が売られたためだ。
円安が進めば、物価高は長引く。消費者の節約志向が強まり、個人消費の腰折れにつながりかねない。原材料価格の高止まりは、特に地方に多い中小・零細企業の打撃となる。
国債は、売られると、価格は下がり、利回りは上がる。
長期金利が上昇し、住宅や自動車購入、教育資金のローンの利息支払いが増加すれば、家計を圧迫する。企業の設備投資や資金繰りに悪影響が及ぶと、さらなる苦境に陥りかねない。
◆賃上げ定着させたい
政府と日銀は、より丁寧に経済を点検し、物価高の抑制と金利の安定へ、適切な対応を取らなければならない。
経団連は春闘で、力強い賃上げの「さらなる定着」を訴える見通しだ。過去3年続いた高い水準の賃金上昇を維持する姿勢を示している。
一方、物価上昇を考慮すると実質賃金のマイナスが続いており「安定的なプラス化に向けて官民連携の取り組みが望まれる」として、企業努力では限界があるとの考えを表明した。
賃上げを負担に感じる中小企業があることを指摘した。
政府は実質賃金のプラス転換を後押しする必要がある。
世界経済は昨年、トランプ米大統領による高関税政策に振り回された。トランプ氏は4月、貿易赤字の削減や製造業の国内回帰を目的として、新たな関税の導入を発表した。
税率を巡る交渉は7月に決着した。日本からの輸入品にかかる関税は15%とされた。既存の税率がこれに満たない品目を15%に引き上げ、超える品目は据え置いた。
高関税の影響について、日銀の植田和男総裁は12月の記者会見で「米関税による経済への悪影響が従来の想定より低下したと判断した」と述べた。
戦後の世界経済を支えてきたのは自由貿易体制である。保護主義的な高関税は撤廃するよう今後も求めていくべきだ。
関税交渉で、日本は関税引き下げと引き換えに、5500億ドル(約85兆円)の対米投資を受け入れた。
両政府の覚書では投資案件の決定権限は米大統領にあり、日本が投資を拒めば、米国は関税を上げることができると規定されている。
そもそも不平等な内容であり、改正を求めるのが筋だ。投資を行う場合には、日本側が投資額に見合う利益を得られるか、精査が必要である。
日中間では、高市首相の「台湾有事は存立危機事態になり得る」との発言が経済にも波及した。中国は「中国国民を狙った犯罪が多発している」などとして訪日自粛を促している。
12月の日銀短観では、宿泊・飲食サービスを含む大企業非製造業の先行きの業況判断指数が悪化した。インバウンド(訪日客)需要が減少し、経済損失は長期に及ぶとの見方もある。
中国以外の訪日客を増やすなど、観光産業のダメージを抑える方策について、官民で知恵を絞りたい。
◆サイバー攻撃対策を
昨年は、企業や個人に対するサイバー攻撃の脅威がクローズアップされた。
アサヒグループホールディングスやアスクルのような大手が犯罪集団の被害に遭い、事業が著しく停滞した。
「ランサムウエア」と呼ばれるコンピューターウイルスを企業のサーバーに侵入させ、機密文書などのデータを使えなくし、復元と引き換えに金銭を要求するのが代表的な手口だ。
個人向けでは、実在企業を装ったメールで偽のサイトに誘導してパスワードを盗む「フィッシング」が横行した。
犯罪集団に証券口座が乗っ取られ、株式が勝手に売買される不正取引の被害が相次いだ。
企業、個人ともに、攻撃を防ぐ対策にとどまらず、被害を最小化する態勢を整えたい。
