多数の議席を獲得したからと、「数の力」でごり押しすれば国民の離反や分断を招く。巨大与党の自民党はおごることなく、誠実な政権運営に努めてもらいたい。
惨敗した野党の中道改革連合は、組織を刷新できるかが焦点だ。国会論戦に間に合うように、立て直しを急ぐ必要がある。
衆院選は自民が歴史的な圧勝を収め、追加公認した無所属1人を含め、単独で3分の2を超える316議席に上積みした。
比例代表の獲得議席が、名簿に載せた候補者数を上回る「名簿不足」になり、全国で計14議席を他党に譲ったほどだ。
高市早苗首相の人気を追い風に、少数与党から一転、巨大与党に躍り出た。安倍晋三元首相の人気を背景にした「安倍1強」をほうふつとする「高市1強」だ。長期政権への足掛かりにもなろう。
首相は9日の会見で、責任ある積極財政や安全保障政策の抜本強化、インテリジェンス(情報活動)機能の強化が「国論を二分する政策課題」だとし、政策転換を何としてもやり抜くと強調した。
飲食料品の消費税を2年限定で0%とする公約についても推進すると主張した。
さらに「国の理想の姿を物語るのは憲法だ。憲法改正に向けた挑戦を進める」とし、憲法改正を発議し、国民投票に向けた環境を作れるよう取り組むとした。
衆院で改憲の発議に必要な3分の2の議席を確保したことは大きな変化だ。今後、衆院憲法審査会の会長ポストを野党から取り戻し、改憲への動きを加速させていくことが考えられる。
だが改憲には国民の機運醸成が欠かせない。政治が前のめりに推し進めるものではない。
今回の選挙で自民は、無党派層の支持を最も多く集めた。自民の候補者が「高市政権への期待をひしひしと感じた」と語るように、首相を推す世論が自民の議席につながったことは確かだ。
幅広い層の期待を受けた首相には、広く目配りすることが求められる。独断専行の政権運営に陥れば国民の支持を失いかねない。
野党第1党の中道は、野田佳彦、斉藤鉄夫両共同代表が、辞任の意向を表明した。議席が公示前の167から49に激減した。責任を取るのは当然だ。
本県では、前職の西村智奈美、菊田真紀子の両氏が辛うじて比例復活したものの、小選挙区の全5議席を自民に奪取された。
立憲民主党の連合、公明党の創価学会と、二つの全国組織が支える「最強の野党」のはずだったが、交流サイト(SNS)などで情報に接する若年層や現役世代に浸透できなかったことがある。
組織頼みを脱し、国民の多様な声を吸い上げる政党に生まれ変わらなくては、巨大与党に対抗していくことは困難だ。
