曖昧さが指摘されてきた危険運転の適用基準を見直す方向が示された。一歩前進と言えるだろう。

 しかし内容には異論も残る。改正法が悪質事故の撲滅に有効か、議論を続けなければならない。

 法相の諮問機関である法制審議会は、自動車運転処罰法の改正要綱を答申した。危険運転致死傷罪の適用要件に、数値基準を新設することが柱となる。

 悪質な事故を厳しく罰する目的で2001年に設けられた危険運転致死傷罪は、死亡事故で上限が拘禁刑20年と定められている。

 ただ現行法は適用の要件を、速度は「進行の制御が困難」、飲酒は「正常な運転が困難」と抽象的に表現している。

 曖昧さから、悪質な事故でも危険運転が適用されず、法定刑の軽い「過失運転」として扱われるケースが各地で続発している。

 一例が、21年に大分市の県道交差点で時速194キロの車が起こした死亡事故だ。

 一審は危険運転致死罪を認めた。だが二審の福岡高裁は被告の運転は「常軌を逸している」が、自車線で直進できており「制御困難な高速度」に当たらないとして、過失致死罪を適用した。

 判決と一般の感覚の乖離(かいり)は大きく、「過失なのか」という被害者遺族の怒りはもっともだ。検察が上告した。

 一方、24年に群馬県伊勢崎市の国道で飲酒運転のトラックが家族3人を死亡させた事故は当初、過失運転で起訴されたが、危険運転致死傷罪に訴因変更された。前橋地裁は危険運転と認め、被告に懲役20年の判決を言い渡した。

 何が「悪質」に当たるのか、数値基準の新設によって明確になることを期待したい。

 数値の内容も注目される。飲酒は、体内アルコール濃度が血液1ミリリットルにつき1・0ミリグラム以上か、呼気1リットル中0・5ミリグラム以上を適用対象とした。おおよそビール大瓶2~3本を飲んだ状態に相当する。

 速度については、高速道路など最高時速60キロ超の道路では60キロ超過、一般道など最高60キロ以下では50キロ超過を対象とする。

 飲酒運転は量を問わず認められない行為であり、自身の判断で避けられる。基準が甘いという指摘もあり、検討が求められる。

 速度は、最高時速が30キロの生活道路に当てはめると、時速80キロ以上の運転が対象となる。この基準以下でも十分に危険な運転であることを忘れてはならない。

 要綱が、これらの数値に満たなくても、基準に準じる場合を処罰できる実質要件を設けた点も重要だ。捜査機関は過度に数値にとらわれず、事故の故意性、悪質性を見極める必要がある。

 ドライバーが意識すべきは、数値ではなくハンドルを握る責任の重さだ。法改正を自らの運転を見直す契機としたい。