原発への信頼を根底から覆す深刻な捏造(ねつぞう)だ。なぜ不正がまかり通ったのか、背景と経緯を検証し、明らかにしなければならない。

 中部電力は静岡県御前崎市にある浜岡原発3、4号機を巡り、再稼働の前提となる原子力規制委員会の新規制基準適合性審査で、耐震設計の目安として想定する揺れ「基準地震動」を意図的に過小評価した疑いがあると発表した。

 基準地震動を策定する際に、計算条件が異なる20組の地震動から平均に最も近い波を「代表波」に選んだと規制委に説明していたが、実際はデータを意図的に選んでいたとみられる。

 浜岡原発は、南海トラフ巨大地震の想定震源域直上に立地している。安全性と耐震性には一段と厳しい姿勢で臨むべき原発で、安全対策工事の基礎となるデータが捏造されたことは許し難い。

 中部電に原発事業を担う適格性があるかどうかさえ疑わざるを得ない背信行為と言える。

 規制委が「安全規制に対する暴挙だ」と批判し、再稼働の前提となる審査を白紙にする考えを示したことは当然だ。

 問題は、なぜこのような不正が行われたのかである。

 捏造には原子力土建部の社員数人が関与したとみられ、聞き取りでは時間の制約や審査への影響が理由に挙げられたという。

 浜岡原発では2014~15年の審査申請から、23年9月に規制委が基準地震動をおおむね了承とするまでに長期間かかった。

 政府が原発を最大限活用する方針に回帰する流れの中で、中部電唯一の原発の早期再稼働を目指すあまり、不都合なデータを隠す意図はなかったか。

 規制委は立ち入り検査で事実関係や原因を徹底検証してほしい。

 審査を担う規制委が不正を見抜けなかったことは重い課題だ。

 基準地震動を含め、原発の耐震性などを確認する審査は、電力会社側が持つ膨大なデータを基に計算した資料に対し、その妥当性を議論する手順で行われている。

 電力会社が示すデータを信じるしかない「性善説」に基づく。

 しかし、初の審査不合格になった日本原子力発電の敦賀原発2号機で、直下の活断層を巡り、原電がデータを無断で書き換えていた事例は記憶に新しい。

 規制委には、性善説を疑い、事業者による意図的な改ざんを見抜く力が求められる。

 20日に柏崎刈羽原発の再稼働を控える東京電力は、同様の不正がないかを問い合わせた県に対し「問題ない」と回答した。

 規制委は中部電以外の電力会社が同様の不正行為をしていないかについては調査しないという。

 だが、地震大国で原発を稼働させる以上、政府の責任で改めて調査し安全を確認することが、国民を守る上で不可欠ではないか。