「大阪都構想」をなぜ衆院選と同じ日に、党内外の反対を押し切ってまで問うのか。大義が見いだせない出直し選だ。
日本維新の会代表の吉村洋文大阪府知事、副代表の横山英幸大阪市長が、任期途中で辞職願を提出した。衆院選と同日の出直し選にそれぞれ立候補する。
吉村氏は看板政策である大阪都構想の実現を争点に掲げるとして「大阪の未来のため、都構想に挑戦させてもらいたい」と述べた。
自民党との連立政権が掲げる「副首都」構想を大阪で実現する上で、吉村氏は大阪市を特別区に再編する都構想が「必要最低の条件」としている。
都構想を巡っては、大阪市で2回、住民投票が行われ、いずれも僅差で否決されている。吉村氏は3回目に挑む前提として、出直し選を念頭に、改めて民意を問う必要性を訴えていた。
しかし、今回の出直し選に対しては、党内外から「大義がない」と反対する声が上がっている。有権者も戸惑いを隠せないようだ。
高市早苗首相の衆院解散の意向が「自己都合」と批判されるのと同様に、党の都合を優先した選挙と言わざるを得ない。
自民、立憲民主、公明各党の府組織は衆院選の対応もあり、対抗馬を擁立しない方向だ。共産党系の政治団体も擁立を見送った。
このままでは、都構想について選択肢が与えられなかったり、十分な論戦が行われなかったりする事態が懸念される。
仮に吉村、横山の両氏が当選しても、住民投票が選択されたと判断するのは難しい。
府知事選、市長選の選挙期間は衆院選と重なる。三つの選挙運動を並行して行う相乗効果を狙っているとすれば、公党としての見識が問われよう。
吉村、横山の両氏が勝利した場合の任期は公選法の規定により、いずれも現在と変わらず、2027年4月までとなる。
衆院選と同日とはいえ、出直し選を行えば費用がかさむ。物価高の中、有権者の理解を得にくいのではないか。
維新では最近、不祥事が相次いで明らかになっている。
一般社団法人の理事に就任することで高額な国民健康保険料を逃れるような「脱法的行為」に関与したとして、元職を含む地方議員6人を除名処分にした。
昨年末には、複数の国会議員の資金管理団体がキャバクラなどに政治資金を支出していたことが判明している。
維新は「身を切る改革」を唱え、議員定数の削減や社会保障改革を訴えてきた。所属議員の行動は党の理念とかけ離れ、信頼を失墜させるものである。
政権与党として重い責任を負っていることを、議員一人一人にしっかり自覚してもらいたい。
