頭上から「キィー」と鳴き声がした。見上げると、民家のアンテナに小さな鳥が止まっている。猛禽(もうきん)類に似た、かぎ型のくちばしが見えた。モズのようだ
▼漢字では「百舌」とか「百舌鳥」などと書く。まるで百もの舌を持っているような、多彩な鳴き声が由来らしい。別種の鳥の声をまねることもあるそうで、時には「ホーホケキョ」と鳴くというから驚く。季節によっては盛んに鳴き、ずいぶん騒がしくなるという
▼人間社会も、やかましくなってきた。きのう衆議院が解散され、総選挙へと走りだした。各地で舌戦が展開される。最も寒さが厳しい季節だ。県内でも、各陣営が風雪に負けまいと大きな声を張り上げるのだろう
▼連立の枠組み変更や新党結成など従来と違った景色も広がるが、候補者の舌の使い方には、変わらず耳を傾けたい。相手によって言うことが違う二枚舌を使っていないか。舌先三寸でごまかそうとしていないか。公約した舌の根も乾かぬうちに、選挙が終われば知らん顔をするようなことはないか
▼モズは縄張り意識が強く、多彩な鳴き声を発するのは縄張りや己の存在をアピールする行動の一つらしい。選挙区という、いわば縄張りを奪い合う選挙戦に通じる部分もあるだろうか
▼この鳥は、獲物を木の枝などに突き刺しておく「はやにえ」の習性でも知られる。餌が少なくなる季節への備えという説がある。先を見据えた行動なのだろうか。選挙でも、目先のことだけでなく将来を見通した弁舌が聞きたい。
