「作家がスターだった時代」
 「作家がスターだった時代」

 作家が役者を務める「文士劇」という芝居がある。中でも「今や伝説」という「文春文士劇」の45年にわたる歴史をまとめたのが本書。スター作家たちが繰り広げるドタバタ活劇のような記録だ。

 文春文士劇は、月刊誌「文芸春秋」を創刊した作家菊池寛の、芝居好きの作家を集めて読者を招待しようという「思いつき」が発端。文芸春秋社主の菊池には「作家を食わせるため」の話題づくりの狙いもあった。

 初の上演は1934年に東京宝塚劇場で。演目は菊池の作品「父帰る」。主演は後に第1回直木賞作家となる川口松太郎が務めた。超満員の客席に、舞台上の文士は「ブルブル震え」「鼻の頭に米粒大の汗」。ところが、すすり泣きする観客もいるほ...

残り510文字(全文:810文字)