対米協力を拙速に判断してはならない。自衛隊の派遣には極めて慎重な国会論議が必要だ。
トランプ米大統領はイランが事実上封鎖するホルムズ海峡の安全確保に向け、各国に艦船の派遣を要求している。
ホルムズ海峡経由でエネルギーを輸入している国々が防衛を担うべきだとして日本と中韓英仏を名指しし、圧力を強めている。
トランプ氏は高騰する原油価格抑制へ、海峡の安全確保を急ぐ。海峡を航行するタンカーを護衛する艦艇や、敷設された可能性がある機雷を除去する掃海艇を各国が派遣することを想定する。
これに対しドイツのメルツ首相は不参加を明確にした。欧州連合も加盟国が消極的だと明かす。
高市早苗首相は19日に予定される日米首脳会談で派遣への具体的な回答を迫られる可能性がある。関係各国と意思疎通を図り、冷静に対応する必要がある。
高市氏は17日、参院予算委員会で「法的に可能な範囲で何ができるかを精力的に検討している」と答弁した。
機雷除去は武力行使に当たり、武力行使を目的とする「海外派兵」は自衛のための必要最小限度を超え、憲法上許されない。
集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法の審議で、当時の安倍晋三首相はホルムズ海峡の機雷封鎖で国民生活に死活的な影響が出るとして、機雷掃海を憲法が禁じる海外派兵の例外に挙げた。
しかし、今回派遣すればイランに敵対視される危険性がある。
高市氏は安保関連法の「存立危機事態」に該当しないと強調し、集団的自衛権の行使としての自衛隊派遣は想定していないとしている。平和憲法を順守する姿勢を明確に示すべきだ。
治安維持を目的とした海上警備行動の発令も考えられる。これまで発令された事例はあるが、国や国に準ずる組織への対処を前提としていないなど課題も多い。
仮に法の範囲内の対応だとしても、戦時下にある現地周辺に自衛隊が展開すれば、イランと交戦状態に陥るリスクが高いことに留意しなければならない。
日本にとって、実現可能な選択肢は限られていることを、首相はトランプ氏に説明し、理解を得るよう努めてほしい。
戦闘が長期化すれば、軍事的コストの増加や、原油価格のさらなる高騰など、米国にとってのデメリットも大きい。戦火の拡大は地域の不安定化にもつながる。
会談ではこうした点を訴え、米国にこれ以上の戦闘を止めるよう働きかけてもらいたい。
日本はイランとも長年にわたって外交関係を築いてきている。事態の沈静化に向け、イランとの対話も続けていくべきだ。
政府は国際社会と協調して外交面で役割を果たす必要がある。
