旧統一教会が広く認知されたのは、1992年の合同結婚式がワイドショーなどで取り上げられた頃だろうか。人気歌手や元新体操選手ら約4万人の信者が、ほぼ初対面の相手と契りを交わす光景はあまりに奇異だった

▼県内ではその3年前、洗脳教育への損害賠償を求め、元信者が初めて教団を提訴していた。新潟地裁では同様の原告が90年代にかけて80人以上に上った。霊感商法の被害が各地で告発され、教団はその後、世界平和統一家庭連合に改称する

▼信者を親に持つ2世が葛藤や苦難をSNSで発信するようになったのは、2010年代中頃だとジャーナリストの鈴木エイトさんは指摘する。2世問題を周知する雑誌記事やテレビの特集も徐々に増えていった

▼それでも、見過ごせぬ実態が世間一般に共有されることはなかった。信教の自由を隠れみのとし、苦悩する2世は置き去りにされた。そうして安倍晋三元首相の銃撃事件が起きた

▼母が信者の山上徹也被告に奈良地裁は無期懲役の判決を下した。刑事事件としては一つの区切りとなるが、社会課題としてけりが付いたわけではない。罪深い事件が起きる前に何ができ得たか、沈思せねばならない

▼事件は被告の生い立ちの不遇だけではなく、就職難の直撃で孤立する氷河期世代の生きづらさもあぶり出した。自民党と教団との浅からぬ「縁」も暴いた。その縁が問題の顕在化を妨げた要因になってはいなかったか。法廷外への投げかけを、過ぎたことにしていいはずがない。

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