佐渡汽船にはかつて名誉船長制度があった。海が好き、船が好きな著名人らに佐渡応援団になってもらうもので、国民的俳優の森繁久彌さんもその一人だった
▼森繁さんは初めて来島した1990年、日本海に沈む夕日をじっと見つめ、佐渡沖の詩的な情景に魅了され、名誉船長を引き受けてくれたという。当時担当した佐渡汽船OBの大谷公一さんが教えてくれた
▼サービス精神旺盛な森繁さんは、佐渡をPRするラジオCMにも出演した。シナリオに生かそうと収録時に自作の21句を持参した。中には「遠雷の はじき崎に 鰤(ぶり)おどり」という句もあった
▼佐渡産の寒ブリと森繁さんの縁は深い。名誉船長は無報酬なので大谷さんらがせめてものお礼として毎冬、脂がのった寒ブリを東京世田谷の森繁邸に届けた。「富山の氷見産に負けない日本一、いや世界一の味だ」と絶賛してくれた
▼森繁邸での恒例行事「ブリの会」には、北大路欣也さんや淡路恵子さん、司葉子さんら名だたる名優が集まった。朝方まで続く宴会の途中で、同席していた大谷さんに注目が集まるような大きな声で「佐渡のブリは今どの辺りを泳いでいるのかな」と尋ね、ブリや汽船のPRに努めてくれたという
▼近年は水温や海流などの影響で佐渡ではブリの不漁が続いているが、県によれば今季は昨季よりは上向いている模様だ。今、どの辺りを泳いでいるのだろう。天国の森繁さんに「佐渡沖に戻ってきてますよ」と報告できる日が早く来ることを願っている。
