市民への監視が強まっていく懸念が強い。国家の暴走を防ぐ歯止めを早急に設けるべきだ。

 「国家情報会議」創設法が参院本会議で可決され、成立した。自民党と日本維新の会に加え、国民民主、公明など5野党が賛成し、立憲民主党などは反対した。

 インテリジェンス(情報活動)の司令塔機能強化を目指すもので、政府は7月にも会議と、事務局となる国家情報局を設置する。

 高市早苗首相はインテリジェンス強化を重視しており、国家情報会議法はその第1弾となる。

 首相を議長とし、官房長官ら9閣僚で構成する。活動として、安全保障の確保やテロの防止が例示されている。新設の国家情報局には、各省庁に情報提供を要求できる総合調整権を与えた。

 個人情報保護への配慮などを求める付帯決議を法案審議で採択したが、法的拘束力はない。

 非常に強い権限を握ることになる。国民への過度な監視につながらないか、危惧せざるを得ない。

 市民からは、憲法で保障されたプライバシー権や「思想の自由」の侵害を不安視する声が上がる。

 どういった範囲の情報が収集されるのかも不透明である。

 時の政権が都合よく情報機関を使う「政治利用」の危うさも否定できないだろう。

 批判に対し、高市氏は「政府の政策に反対するデモが情報活動の監視対象となることは一般的に想定し難い」と理解を求める。

 だが、情報局の活動をチェックする機能を設けることなく、恣意(しい)的な運用がないと主張しても説得力はない。

 高市政権は今後、スパイ防止法制定や対外情報機関の創設も視野に入れる。

 不安を置き去りにしたまま、情報活動の強化を急ぎ過ぎである。市民の懸念と向き合い、国会や第三者機関が活動を検証する仕組みづくりをまず急ぐべきだ。

 求められるのは、情報機関の暴走に歯止めをかけるための民主的統制である。

 過去には、公安警察や自衛隊情報保全隊が市民運動や集会などを調査し、裁判所からプライバシー侵害を認定された事例がある。

 こうした過去を見れば、市民の不安は杞憂(きゆう)とはいえまい。

 政権が次に見据えるスパイ対策には、排外主義を助長する恐れもある。国の機密情報を守ることは重要だが、その運用には慎重さが欠かせない。

 今回の国家情報会議の創設法は、首相が掲げる安保3文書の前倒し改定といった「国論を二分する政策」の第1弾でもある。

 成立を機に高市カラーの強い政策の実現に拍車がかかることも予想される。

 国論を二分するほどの政策であれば、理解を得る説明を首相自身が尽くしてもらいたい。