国民の人気が高いスポーツであるプロ野球の監督による暴力行為だ。社会に大きな影響を与え、ファンを失望させた。
暴力は決して許されない。そのことを改めて肝に銘じ、社会全体で共有していかねばならない。
プロ野球巨人の阿部慎之助監督が長女への暴行容疑で、警視庁に現行犯逮捕された。釈放された後、球団オーナーに辞任を申し入れ、受理された。
現役の監督がシーズン中に逮捕され、辞任するという事態は、極めて異例だ。
自宅で長女の胸ぐらをつかんで倒すなどした疑いで逮捕された。酒に酔っていたとみられる。
球団によると、姉妹がけんかを始めたため、止めようとした際に長女から言い返されたことに腹を立て、長女の襟元をつかみ、投げ飛ばすなどの暴行を加えた。長女にけがはなかった。
長女は対話型の生成人工知能(AI)「チャットGPT」に相談、回答に基づき児童相談所へ通報し、児相が警視庁に連絡した。長女は児相から意向を聞かれず警察に通報され、驚いているという。
ただ、全国の警察は虐待などを「人身安全関連事案」とし、迅速に被害者の安全を確保する対応を強化している。今回も暴行の事実を確認し、逮捕した。
懸念されるのは、二次被害だ。児相へ通報した長女に対して、「辞任に追い込まれた阿部慎之助かわいそう」といった誹謗(ひぼう)中傷する投稿が、交流サイト(SNS)に相次いでいる。
専門家は、悪質性によっては侮辱罪などが成立する可能性もあると指摘する。児相への通報を非難する投稿は、深刻な虐待を受けている子どもの通報をためらわせることにもつながりかねない。
誹謗中傷は言葉の暴力である。厳に慎まねばならない。
長女は高校3年で多感な年頃だ。温かく見守るべきである。
取材に応じた阿部前監督は「多大な心配をかけた」など涙ながらに話し、強い後悔を感じさせた。深く反省してもらいたい。
前監督は、現役時代は通算2132安打を放ち、スター選手として一時代を築いた。2024年に巨人1軍監督となり、就任1年目でリーグ優勝を果たした。
自身が猛練習で活躍の土台を築いたこともあるためか、今どきの風潮と異なる「昭和の気質」も見られた。選手の自主性に任せる指導者が増える中、厳しさは際立っていたという。
こうした気質が長女への暴力行為につながったのなら、残念だ。
プロ野球界は近年、違法薬物や賭博など不祥事が相次ぐ。
子どもたちの憧れの職業であり、ファンも多い。夢を壊し、期待を裏切る行為を起こしてはならないとの自覚を、関係者一人一人に強く求めたい。
