核兵器使用の脅威が高まる中、世界が結束できなかったことが残念でならない。危機感を共有し、核軍縮への道筋を探る場を早急に立て直すべきだ。

 ニューヨークの国連本部で約4週間にわたり開催された核拡散防止条約(NPT)再検討会議は、成果文書を採択できず、決裂したまま閉幕した。イランの核問題に関する記述で、米国とイランの対立が解けなかった。

 2015年と22年に続く採択失敗で、3回連続は1970年の条約発効以来初めての事態だ。核を巡る各国の埋め難い分断が露呈したといえる。

 NPTは核兵器保有を米英仏中ロ5カ国のみに認め誠実な核軍縮交渉を義務付ける。他の国には核保有を禁じる。核軍縮と不拡散の礎石とされる重要な体制である。

 それにもかかわらず、会議で核保有国が自国優先の主張に終始したことは残念だ。

 特に鮮明だったのがロシアだ。成果文書案については、北朝鮮の非核化を支持する項目や、ウクライナ南部にあるザポリージャ原発の安全の重要性を確認する項目などの削除を求めた。

 4年以上続くウクライナへの侵攻で軍事支援を受ける北朝鮮に貸しを作りたい意向が透ける。この原発は、ロシアが占領している。

 前回2022年の会議でも、この原発の管理をウクライナに戻すよう促す記述があった成果文書の最終案にロシアが唯一反対し、文書の採択を阻んだ経緯がある。

 核問題を巡る大国の利己主義が目に余る。

 中国は核戦力を急速に増強させる。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所によると、中国の核弾頭保有数は、21年は350発だったが25年には600発に増えた。ロシア、米国に次ぐ数だ。

 NPT体制で核保有が認められているため、国際原子力機関(IAEA)による査察義務がなく、17年以降のプルトニウム保有量を報告していない。

 不透明な核政策は、際限のない核軍拡競争につながる。数少ない核保有国として、自ら透明性を高める姿勢が求められる。

 気がかりなのは、唯一の戦争被爆国である日本の政府が会議で十分存在感を示せなかったことだ。

 22年の会議には、当時の岸田文雄首相が日本の首相として初めて出席したが、高市早苗首相は今回、参加を見送った。

 成果文書案についても、政府の代表が「核使用を防ぐ上で非保有国が果たせる役割を認識する」との文言の削除を求めた。米国の核抑止に依存する日本の責任が強調されることを警戒した可能性が指摘されている。

 政府が掲げる「核兵器のない世界の実現」への本気度が見えない。被爆者とともに、非核の議論で世界をけん引してもらいたい。