雪解けが進む県内の山間地には雪崩注意報が出ている。地面から丸ごと崩れる全層雪崩だけでなく、寒の戻りで降雪でもあれば表層雪崩の危険が生じる

▼2017年3月末、栃木県那須町で高校生7人と教諭1人が死亡した雪崩は、後者だった。登山講習の引率教諭ら3人が業務上過失致死傷罪に問われた刑事裁判は今月初め、事故から9年を前に控訴審判決が下された

▼一審に続き有罪だった。無罪を主張する教諭側は上告した。主張の対立で怒りを募らせる遺族も、執行猶予がついた判決に納得しない。裁判は続く。この事故を考えるたび、本紙記事にもなった女性を思い出す。遺族の一人だ

▼女性は教諭らの責任を問う民事訴訟に加わらなかった。「事故で廃部になったら息子が悲しむ」と高校の山岳部を見守る活動に参加している。「憎む気持ちは捨てたかった。それが生きる原動力にはならなかった」と山に登り続ける

▼似たことを松本サリン事件の被害者河野義行さんも語っていた。妻を意識不明にさせたオウム真理教への憎しみを問われて答える。「人生は有限です。人を恨むという行為は、その限られた人生を実につまらないものにしてしまう」(「1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書」)

▼理不尽に家族を失うような災禍に遭ったとき、責任を追及することも大切だ。感情の納め方に正解などない。ただ、憎悪や憤怒をたぎらせ続けて日常を暮らしていくのはつらい。誰もが分かっているのだろうけれど。