東京電力柏崎刈羽原発6号機が営業運転に移行して1カ月余り。福島第1原発事故を引き起こした企業としては安全を最優先にするために、事故から学ぶ姿勢が欠かせない。一方で社内では事故を直接知らない世代が増えている
▼東電グループ5社では2025年4月時点で、11年の事故後に入社した人が全体の25%を超えたという。今後、事故時を肌感覚で知るベテランが続々と定年退職する見通しで、教訓の継承は大きな課題といえる
▼時間の経過で、貴重な経験を有する人が減っていくのは避けられない。それだけに、過去の事実を受け止め、先人の失敗や経験をどう生かすかが問われる。ほかの組織や社会全体も同様だろう
▼田中角栄元首相の言葉を思い出す。「あの戦争に行ったやつがこの国の中心にいる間は大丈夫だ。いなくなった時が怖いんだ」。辛酸をなめ尽くした大戦への反省に基づき、この国は80年にわたって平和を保ってきた
▼そんな日本はいま岐路に立つ。政府は殺傷能力のある武器の輸出を解禁し、国家安全保障戦略など安保関連3文書の改訂に向けた議論を本格化させている。高市早苗首相が見直しを持論とする非核三原則の扱いも焦点となる。与党は来月にかけて意見集約する方向という
▼戦争を肌感覚で知る人は極めて少なくなった。安全保障を取り巻く環境は、冷戦時から大きく変化している。だからといって、過去の過ちを踏まえず、現状を追認するばかりでは危うい。歴史から学ぶ姿勢を忘れたくない。
