良い成績の時は神様扱い、逆に落ち込むとまるで犯罪人扱い。プロ野球阪神で活躍した掛布雅之さんが、自著でファン気質を書いている。そこで紹介されているエピソードがすさまじい

▼膝と腰を痛め、不振を極めたシーズンのことだった。自宅マンションの駐車場に行くと愛車が傷つけられている。「掛布なんか死ね!」。硬貨か針金のような物で書かれたようだった。別の日には車のボディーに砂をまかれたこともあった

▼どこでどう調べたのか、非難の電話は自宅や千葉の実家にもかかってきた。たまりかねて自宅の電話番号を変えたものの名も告げぬ罵声はやまない。怒りに体が震えた。そして胸が張り裂けそうな悲しさと悔しさを味わった

▼人気球団の主砲を務めたスターの昔話と片付けるわけにはいかぬ。スポーツ選手への誹謗(ひぼう)中傷が今も後を絶たない。ワールド・ベースボール・クラシックの準々決勝でベネズエラに敗れた日本代表の選手らに対して、SNSによる誹謗中傷が確認されたことは記憶に新しい

▼掛布さんの世代の選手は、スタンドからやじを浴びても多くが有名税のうちと耐え忍んだが、行きすぎた暴言は選手に深刻な悪影響をもたらす。プレーヤーとファンの関係を考え直す時期に来ている

▼解説者の多くがリーグ連覇を予想する阪神はまずまずの滑り出しを見せた。ただ、前評判が高い分、負けが込んだ時のファンの反応が気にかかる。虎党に限らずひいきの引き倒しになってしまっては、選手はたまらない。