公正さからは程遠い総選挙であり、政権の正当性を主張するのには無理がある。軍政継続による国民の困窮が気がかりだ。
ミャンマーのミンアウンフライン前国軍総司令官が10日、新大統領に就任した。
ミンアウンフライン氏は、民主派指導者のアウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟が大勝した2020年の総選挙に不正があったと主張し、21年にクーデターで民主政権を転覆させ、全権を掌握した人物だ。
その大統領就任は、軍事政権による支配の固定化を意味する。
軍政継続により懸念するのは、内戦の拡大と人権侵害である。
ミャンマーでは国軍と、抵抗勢力である民主派や少数民族武装勢力との対立が激化している。国軍は統治をにらんで空爆を多用し、失地の奪還を進めている。まず内戦を停止するべきである。
人権団体によると、21年のクーデター以降の5年間で、軍事政権の弾圧を受けて7700人以上が死亡した。
民主化をもたらしたスーチー氏は拘束されたままだ。根付き始めていた自由を奪われた国民の失望感は底知れない。
今回の総選挙は、昨年12月から今年1月まで3回に分け段階的に実施された。
総選挙を経た「民政移管」を演出するが、選挙はスーチー氏の国民民主連盟を含む主要な民主派を排除した上で強行された。
投票しなければ軍政に報復されると恐れた国民が少なくなかった。電子投票を通し、どの政党に投票したかを把握される可能性も指摘された。
「投票の自由」が保障されない不安は大きいに違いない。
公正さを基本とする民主的な選挙からは懸け離れていると言わざるを得ない。
結局、親軍勢力が上下両院の8割以上の議席を獲得した。
ロシアなどと共に監視団を派遣した中国は、選挙について「秩序あるプロセス」と評価した。だが中国は、国軍に武器を供給する親密な関係がある。
一方、東南アジア諸国連合(ASEAN)は結果を承認するかどうか、合意できていない。
ミャンマーは昨年3月28日、マグニチュード7・7の大地震に襲われ、3800人を超える人々が犠牲になった。
国連難民高等弁務官事務所によると、国内避難民は内戦と地震で370万人に上る。年内に400万人に達するとの見方もある。
被害が大きかった第2の都市マンダレーなどでは1年たっても復興が進まず、軍事政権による支援金の給付遅れや支援物資を巡る不正が横行している。
見せかけの民政移管では国民の窮状は続く。国際社会が結束し軍事政権と向き合わねばならない。
