単身世帯が増加する中で、身寄りのない高齢者は今後、確実に増えていく。孤立を防ぎ、安心して老後を迎えられるように、制度を速やかに整える必要がある。
政府は、身寄りのない高齢者への支援を強化する社会福祉法などの改正案を国会に提出した。
地域の社会福祉協議会などが、入退院時や葬儀の事務手続きをサポートできる制度を新設する。緊急連絡先がないために入院できない、葬儀の手続きをする人がいないといった事態に対応する支援の枠組みを整える。
配偶者との死別で1人暮らしをしたり、親族と離れて生活するうちに疎遠になったりして、困りごとがあっても頼れる家族や親族がいない高齢者は増えている。
そうした高齢者は、施設入居時などに身元保証人を求められても疎遠な親族に依頼しづらいため、ケアマネジャーらが施設と親族を仲介して調整し、なんとか引き受けてもらうことも多いという。
だが、そうした対応にもいずれ限界がくることは明らかだ。
日本総合研究所の試算では、配偶者や子ども、3親等以内の親族がいない65歳以上は2050年には448万人に上り、24年の約1・5倍になる。
身元保証人や死後対応の担い手を巡り、課題を抱える人が増え続けていくことが確実だ。
万一の場合の手続きだけではなく、通院やごみ捨てといった日常生活でも手を借りることが難しいため、高齢者の健康状態や住環境が悪化する心配がある。
死亡後は、賃貸住宅の家財処分で家主や行政が困ることがあるほか、持ち家であっても老朽化で建物が崩れるなど、周辺住民の生活に影響することも懸念される。
当事者が孤立を深めないように、制度を介して社会全体で支えていかなくてはならない。
新制度は、頼れる親族らがいない高齢者だけでなく、認知症などで判断能力が不十分な人も対象になる。十分な資金がないなどの条件を満たす人は、無料か低額で受けられるようにするという。
誰もが身寄りのない状況に置かれる可能性があることを前提に、幅広い人が利用しやすい制度設計にしてもらいたい。
身元保証や死亡後の葬儀の手配などでは、民間支援サービスの需要も高まっているものの、契約金が高額なケースや、高齢者が理解しないまま契約を結んでしまうといったトラブルも後を絶たず、消費者庁が注意を促してきた。
昨年には業界団体が発足し、信頼できる民間事業者を増やす取り組みを進めている。国の指針より厳しい審査基準を満たした事業者を公表し、基準を満たさない事業者には研修をする考えだ。
1人で老後を迎える人が安心できるように、健全で質の高いサービスが求められる。
