新潟県長岡市のアマチュア文筆家らでつくる「長岡ペンクラブ」による年刊誌「Penac(ペナック)」の最新号に、長岡空襲の語り部として長年活動し、6月に87歳で亡くなった金子登美さんの遺作が収録されている。ペンクラブは「金子さんの小説の魅力も感じてほしい」と話している。
金子さんは、1976年のペンクラブ発足当初からの会員で、小説を中心に執筆してきた。編集長の小野塚純夫さん(71)によると、太平洋戦争前後の長岡や、母親の実家があった片貝町(現小千谷市)を舞台にした作品が多い。母が営んでいた料亭が登場するなど半自伝的小説もある。
6月発行の第46号には、遺作となった短編小説「おさんの手紙」が載っている。戦前の長岡市近くの農村を舞台に、主人公の叔母がキツネの神様に取りつかれ、奇想天外な行動を起こすストーリーだ。
小野塚さんは「登美さんは文才があったからこそ、語り部としてもすばらしい表現力を持っていた。まさかこれが遺作になるとは」と惜しむ。
長岡ペンクラブには現在、会員69人・団体が所属。ペナック最新号には、16歳の女子高校生が書いた短編小説や、90歳のベテランによる評論など、さまざまなジャンルの51作品を掲載。長岡市出身の作家、松岡譲の孫による寄稿もある。
1650円。問い合わせは事務局、090(1401)4874。