間に立つべき自分の頭越しに、直接相手とやり取りされれば多くの人は面白く思わないはずだ。ましてや自分の頭上を飛んだのが兵器となれば背筋が凍り、強い怒りが湧いてくる
▼北朝鮮が発射したミサイルが日本列島の上空を通過し、太平洋に達した。軌道の下には多くの人の暮らしがある。自国の利益のためなら、他国民の命を危険にさらしても構わないということか
▼「自国の利益」と書いたけれど、果たして本当に、かの国に暮らす一般市民の利益になっているのかは疑わしい。ミサイル発射と聞くたびに思う。発射に費やした資金は、市民生活を犠牲にして捻出された可能性がある
▼韓国国防省傘下の韓国国防研究院は6月の時点で、北朝鮮が今年実施したミサイル発射にかかった費用が4億~6億5千万ドル(当時のレートで約540億~約870億円)に上ると推計した。経済の基盤が脆弱(ぜいじゃく)な北朝鮮では相当の出費なはずだ
▼全国民が新型ウイルスワクチンを1回接種可能な金額だという。コメの購入費に充てれば食糧不足を解消することができるとも指摘される。しかし、その後もミサイル発射は異例のペースで続いている。さらには近く核実験に踏み切るとの観測もある
▼北朝鮮の指導部は防衛のため、核兵器を放棄することはないと断言する。だが、それは市民を守るためというより現体制を維持するためなのが本音だろう。今年は豪雨で農産物に被害が出たとの見方もあるそうだ。市民の暮らしを守らない国とは何なのか。