ゆっくりと、しかし確実に土砂が押し寄せる。地滑りである。流出の速度が遅いことで、かえって不気味な様相が濃くなる。移動する土砂の量が膨大なことが多く、被害の規模も大きくなりやすい。いったん土砂が動き出すと、止めるのは非常に困難だという
▼2012年に発生した上越市板倉区国川の地滑りでは時速1メートル程度で土砂や雪の塊が動き、流出防止のために設置された土のうや災害用ブロックをのみ込みながら民家に押し寄せた。建物はミシミシと音を立てて倒壊した
▼土砂は長さ500メートル、幅150メートルにわたって崩れ、住宅4棟が全壊した。本県は全国でも有数の地滑り地帯として知られる。その後も阿賀町や長岡市、糸魚川市などで発生し、大きな爪痕を残した
▼発生するのは陸上ばかりではない。海底でも起こることがある。本県沖にも、大規模な地滑りの痕跡があることを先日の記事で知った。地滑りで膨大な量の土砂が動き、海面を20メートル以上動かして大津波が発生したと推定される
▼専門家によると、県が策定した津波浸水想定図は海底の活断層に起因する津波について計算している。海底地滑りによる津波は考慮しておらず、両方が同時に起きた場合は想定を超える津波が発生する可能性が否定できない
▼従来想定より大きな津波の可能性があるとなれば市民生活だけでなく、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働論議にも影響する可能性がある。再稼働の是非を考える上で、新たな論点がまた一つ浮上したとは言えないか。