部品単位まで解体し徹底的に点検したという。JR磐越西線の「SLばんえつ物語」の客車をけん引する蒸気機関車C57-180号機がさいたま市での整備を終えて帰ってきた。29日に約1年ぶりに運行を再開する
▼「貴婦人」の異名を持つ優美な姿との再会を心待ちにするファンも多い。今回の点検は「全般検査」と呼ばれる。解体した部品に劣化がないか調べ、必要な交換などを施し組み立て直す。技術者は車体の隅々まで目を光らせる
▼全般検査のような点検と改善を迫られている組織がある。柏崎刈羽原発の再稼働を目指す東京電力だ。福島第1原発事故を踏まえ「いかなる経済的要因があっても安全性の確保を前提とする」「規制基準の順守にとどまらず、自主的に発電所の安全性を向上する」などの基本姿勢を「七つの約束」として安全管理ルールに盛り込んだ
▼自らを見つめ直し、安全を最優先する組織に生まれ変わることを宣言したはずだった。だが、その姿勢に疑問符が付くような不祥事が後を絶たない。原子力規制委員会は東電に原発を運転する「適格性」があるかどうかの再確認に乗り出した
▼柏崎刈羽原発の稲垣武之所長も先月の記者会見で社内の改革が不十分だと認めている。SLを解体して点検するように、組織の末端まで見つめ直して問題や課題を明らかにし改善することが求められている
▼SLは見た目こそ頑丈そうだが、繊細な整備が必要だという。原発のプラントやそれを運転する組織にも通じるだろう。