
「町中華」に明確な定義はない。しかし、筆者には個人的定義があって「昔からその土地に根付いて、愛されている大衆中華店。古き良き、昭和の味わい」。ラーメンがあって、ギョーザがあって、飯で使うのもよければ、一杯飲み屋として使うのもよし。そんな使い勝手のいい町中華が僕は大好きだ。
小島岳大(酒ジャーナリスト・ライター)
撮影は写真家・渡部佳則
てっぱんのラーチャン、飲みの相棒は肉ドーン&野菜モリモリの「肉野菜炒め」
食堂 衆楽(新潟市中央区沼垂東3)
沼垂テラスのほど近くにある「食堂 衆楽(しゅうらく)」(新潟市中央区)の誕生は、戦後間もないころ。新潟県三条市出身の初代が始めた製麺屋兼うどん屋に端を発する。「祖父の跡を継いだ父に代わり、2008年ごろから私が店を仕切っています」と3代目の吉川満さん(58)。「夫は人を喜ばせるのが好きで」と話す、妻の美恵子さん(48)と店を切り盛りしている。


ランチタイムには看板メニューの「ラーチャン(ラーメンと半チャーハンのセット)」(700円)の注文が面白いように入り、多い日には昼だけで60食を超えることも。夜にはここに飲みの客がプラスされる。
そんな飲みのお供に人気なのが、「肉野菜炒め」(1200円)。豚バラ肉をニンニクと一緒に炒めて塩コショウで味付けて、一度皿にあげておく。同じ中華鍋で今度は野菜を炒め、取り出しておいた肉を戻して、全体を絡めて完成だ。
目の前に運ばれてきたそれにまず度肝を抜かれた。圧倒的ボリュームである。野菜炒めに肉チョロチョロではなく、肉ドーン&野菜モリモリ。適度に効いた塩味とコショウの辛みがビールのピッチを加速度的にアップさせる。
常連の声から生まれたという、「麻婆(マーボー)揚げそば」(1200円)もすごかった。油で揚げると膨らんで量が増えるため、揚げ焼きそばの場合、1人前で半玉使用にする店もある中、この店ではきっちり一玉。揚げ麺の上に載るのは、自家製マーボー豆腐。万人受けするようにと辛みを抑えた特製あんが徐々に麺をふやけさせる。しなしなになるほどにビールが進む一品だ。

新潟市中央区沼垂東3の5の30。午前11時~午後2時30分、午後5時~午後9時。水曜午後定休、ほか不定休。025(244)3937
■ ■
「客を喜ばせたい」―。店主の思いのこもったメニューは、新潟市内の他店にも存在する。
あっさりな背脂、飲んだ後でも「ちゅるん」と胃袋へ
中華飯店 聖龍(新潟市中央区東大通1)
JR新潟駅からほど近くにある...