
初めて見たときは、その大きさに驚いた。新潟県内はもちろん、全国にも知れ渡る、長岡市栃尾地域の「栃尾の油揚げ(あぶらげ)」である。長岡市の栃尾観光協会によると、平均的なサイズで長さ20センチ、幅8センチ、厚さ3センチほど。一般的なものの3倍近くあるだろうか。外はパリパリ、中はふっくらと揚がっていてさっぱりした味わい。かつお節やネギなどの薬味を載せてしょうゆをかければ、1枚ペロリと食べられる。
旧栃尾市出版の「栃尾市史」によれば、栃尾の油揚げが草履のような大きな油揚げになったのは江戸時代と考えられている。現在のような大きさに統一されたのは昭和30年代半ば頃で、なぜこのような大きさになったかは不明とのこと。
独自の発展を遂げたのは、山に囲まれた栃尾では、魚介類の入荷が少なく、タンパク質や脂肪を油揚げから取るために、多く食べたからだろうといわれている。低温と高温の二つの鍋を使って油揚げを揚げる方法は栃尾独特で、江戸時代に考案されたと伝えられている。
現在、栃尾観光協会が発行する「あぶらげ店マップ」には、16軒が記載されている。各店が製法などに工夫を凝らして独自の油揚げを製造しており、同じように見えても食べ比べれば違いが分かる。地元の人たちは、焼いて食べるならどこの店、煮物に使うならどこの店と、使い分けている人もいるようだ。
油揚げの原料は大豆。大豆から豆乳を取り出し、にがりで固めて生地(豆腐)を作って、それを菜種油などで揚げたものが油揚げだ。栃尾の油揚げがおいしいのは、そもそも豆乳がおいしいからではないか。
そう考え、豆乳作りにこだわる2軒の油揚げ店を訪ね、おいしさの秘密を探った。...
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