
暑さも少し和らいできたので、「大人の遠足」をテーマに昔からよく知る旧中条町(現新潟県胎内市)を散策しながら町巡りをすることにした。

小島岳大(酒ジャーナリスト・ライター)
撮影は写真家・渡部佳則
まずは腹ごしらえ、すき焼きスタイルが「志まつ食堂」流
久しぶりに列車に乗ってJR中条駅(新潟県胎内市)に向かう。着いたのは正午過ぎ。腹の虫が鳴くので、駅から徒歩7分ほどの中華そばとジンギスカンの「志まつ食堂」に向かう。ジンギスカンは、店の看板メニューで、今や地元のソウルフードとも呼べる食べ物だ。中条でバーベキューといえば、ジンギスカンといわれるほど多くの人々を魅了している。
実はここ、以前からの大のお気に入り。少し前までお品書きはなく、注文は「肉、何人前だね?」「2人前に卵とご飯とお漬物」といったやりとり。「最近若い人が手伝ってくれるようになってね、メニュー表を作ってくれたんだ」と話すのは店の女将(おかみ)・嶋津美恵子さん(91)。
創業は1958(昭和33)年。中華そばとジンギスカンのみというシンプルなメニュー構成は創業当時から変わらない。当時の中条町には工場が次々と進出し、珍しさも相まって店は連日大にぎわいだったそう。

看板メニューのジンギスカン1人前(650円)に生卵(50円)とご飯・小(200円)、お漬物(500円)が目の前に到着。ジンギスカンはニンニクの効いたやや甘めのみそダレをまとわせ、焼き網に乗せてじっくり焼く。
その間に準備するのが、溶き卵。そう、焼き上がった肉を卵に潜らせていただく、すき焼きスタイルがこの店の流儀になっている。「お父さんと私で一所懸命考えた」と嶋津さん。

早いときは朝5時から仕込むという羊肉は、特製みそダレのおかげで特有の臭みが抑えられ、厚みがあるのに柔らかい。やや濃いめの味付けは、卵に潜らせることでまろやかで芳醇(ほうじゅん)に。地野菜の自家製漬物は、これぞ箸休めといった存在。注文を忘れてほしくない一品だ。

「100歳まで元気に店を続けるのが目標だよ」という女将に、「なくなっちゃいけない味ですよ」と返すと、優しげにほほ笑んだのが印象的だった。
胎内市西栄町1の9。午前11時~午後10時。不定休。0254(43)2276
古くから続く「三八市」と新しい「本町マルシェ」
縞玉呉服店・くどうもちや
志まつ食堂を...