元号なら明治33年、1900年のパリ五輪以来128年ぶりの復帰になるという。2028年ロサンゼルス五輪の競技にクリケットが加わることが決まった。人気の高いインドを意識してのことらしい

▼クリケットは、投じられた球を打撃面が平たいバットで打って得点を競う。野球の原型とされる。五輪では3時間ほどで終わる形式が採用されるが、1試合に5日間かける大会もあるというから驚く

▼英国からこの競技がもたらされたインドでは、断トツの人気を誇る。トップ選手の年収は30億円を超えるらしい。野球アニメ「巨人の星」のインド版は主人公がクリケット選手だ

▼国際オリンピック委員会(IOC)はこの人気に目を付けた。英ガーディアン紙によると、インドでの放送権料は来年のパリ五輪では1560万ポンド(約28億4千万円)だが、クリケットの採用で約10倍の1億5千万ポンドに跳ね上がる可能性がある

▼スポーツだけでなく、政治的にも経済的にも存在感を増しているのがインドである。現地に事業所や取引先がある県内企業も多い。二極化する世界のいずれにもくみせず、新興・途上国の雄となった

▼中国による圧迫を警戒している点で、日本と戦略的利益を共有している面もある。一方で内政は最近、権威主義化する傾向が見られるという。遠藤乾・東京大教授は先日の本紙「現論」コーナーで、共通利益について一定程度協調しつつ、あるべき関係を「熟考すべき時を迎えた」と指摘した。目が離せない国である。

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