〈雪割つて春創(つく)らむとするや翁(おう)〉加藤知世子。安塚町(現上越市)出身の俳人ならではの思いがにじむ。暖国の人は道の「雪のけ」や屋根の「雪下ろし」ならイメージできよう。でも「雪掘り」と言うと、わざわざ何を掘り出すのかと疑問が湧くかもしれない

▼まして「雪割り」などと言われたら。あんなに柔らかくて軽いものをなぜ割るのかと不思議がるだろう。背丈を軽く超す根雪に閉ざされる豪雪地では、地表近くの雪は極寒と自身の重みでギュッと押しつぶされ、硬く凍りつく

▼3月中旬ごろになると、やっと黒い土やフキノトウが顔を出し始める。そこで氷のようになった残雪をスコップやツルハシなどで砕き割る。雪解けを待っていたら農作業も遅れる。待ちわびた春を、汗だくで地上に引っ張り出す感じ。冬最後の戦いかもしれない

▼同じ戦いでもウクライナでは心が凍るような暴挙が続く。かの地は2月中旬に地面凍結がピークとなる。この時期をめどにロシアは侵攻を計画していたとの米軍の分析がある

▼土が凍れば戦車もぬかるみにはまらない。雪解け前の電撃戦のつもりだったのか。かつてロシアはナポレオンの進撃を受けた際、厳寒という「冬将軍」のおかげで窮地を逃れた。過酷な気候が国を守ってくれてもいた。今回は侵攻に利用したようだ

▼停戦交渉は難航している。凍った地面が緩む時季になっても戦闘は続いているだろうか。世界一丸で雪を割り、平和が訪れるようにしないと。キエフの春を早く創りたい。

朗読日報抄とは?