陳皮香る、やさしい養生粥

 家庭で作れる「薬膳」として、温州ミカンを取り上げる。国際食養薬膳師の髙津もろみさん(新潟市西区の「食守の店 髙津」代表)が注目するのは、「一物全体食(いちぶつぜんたいしょく)」という薬膳の考えだ。これは、食べ物は全体で一つの命と捉え、丸ごと余すところなく食すことで、調和の取れた食べ方ができるということ。

 「温州ミカンは果肉はもちろん、外皮や薄皮、筋に至るまで、すべてに冬の体にうれしい作用があります」と髙津さん。

 冬は気温が低く、それにより血管が収縮して血の巡りが悪くなる。そのため体が冷え、新陳代謝が落ちて免疫力も下がる傾向にある。そんな季節にこそ、手軽に食せるミカンの出番だ。果肉や果汁にはビタミンCやクエン酸が豊富。渇きを癒やして疲労回復につなげ、免疫力アップに効果をもたらす。

 また薄皮や筋には食物繊維のペクチンや、ポリフェノールの一種であるヘスペリジン、ミネラル分のカリウム等が含まれていて、血流をよくするほか、高血圧予防、動脈硬化予防にも作用する。特にビタミン様物質(ビタミンP)のヘスペリジンは、ビタミンCの作用を助けてコラーゲンの生成を促し、毛細血管の強度を高めて血流改善を図ってくれる。

 またミカンといえば、皮を乾燥させた薬膳食材・陳皮が有名だ。漢方薬で使う本格陳皮は一定の条件のもと1年以上熟成させて作るが、「家庭で乾燥させたものでも十分に薬効が期待できます」と、髙津さんは手作りを勧める。

 胃の疲れを感じたとき、まずは胃の働きを高め、食欲を増進してくれる陳皮のお粥(かゆ)で、体を整えたい。...

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