波は、こんなに高い場所にまで届くものなのか。

 11年前の東日本大震災で15メートルもの大津波にのまれた宮城県女川町を昨年3月、歩いた。

 震災直後に中学生になった女川町の子どもたちが「千年先の人々の命を守りたい」と発案して募金を集め建立した「女川いのちの石碑」を巡るためだ。

 碑は町内に21ある浜で津波到達地点より上に建てる計画で、訪れた時には20基が設置されていた。

 高台にある碑にはそれぞれ、異なる句が刻んであった。

 〈ただいまと/聞きたい声が/聞こえない〉〈逢いたくて/でも会えなくて/逢いたくて〉

 奪われた命への悲しさ、悔しさを胸に詠んだものなのだろう。

 碑の前で震災の日を頭に描こうとしたが...

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