春。進学先や就職先に夢を膨らませている方々は多いだろう。一方、希望とは異なる道に進まざるを得なくなり、失意のどん底にいる人も少なくないに違いない。

 本県の淡麗辛口ブランドを築いた功労者、早福岩男さん(88)は高校時代、大学に進んで研究者などになる夢を描いた。だが「長男」を理由に父親に反対され、家業の酒店を継ぐことになった。

 「大学に未練があり、しばらくの間は図書館で受験勉強を続けたり、東京に進学した仲間の下宿に行ったりしていた」と振り返る。

 ただ、次第に自身の歩む道を「運命だ」として受け入れると、持ち前のバイタリティーを発揮。県内を歩き、人柄の良い真面目な蔵元を発掘し、「本物」の地酒を育て、...

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