国語辞典は、仕事に欠かせない道具の一つだ。

 「ずいぶん年季が入っていますね」。私の国語辞典を見て、社外の人が半ばあきれていた。

 よく引くからというより、扱いが雑なせいで、本体とカバーが分離している。3年前に改訂版が出たのに買い換えず使っていた。

 辞書編集部を舞台にした三浦しをんさんの小説「舟を編む」が話題になったのは、10年前の2012年だった。

 その中で、「愛」の語釈に「異性を慕う気持ち」とあることに、若手がなぜ異性に限定するのか疑問をぶつける場面がある。

 「旧弊な思考や感覚にとらわれたままで、日々移ろっていく言葉を、移ろいながらも揺らがぬ言葉の根本の意味を、本当に解釈することができるんで...

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