朝刊連載「永田町天地人」で、本紙客員論説委員で政治ジャーナリストの後藤謙次さんが、国会に政治倫理審査会が設置されるまでの道のりを振り返っていた

▼ロッキード事件に端を発する金権批判の高まりで、政界は政治倫理の確立を宣言することを迫られた。そうした中、政倫審の設置と同じく1985年に議決されたのが「政治倫理綱領」と「行為規範」である

▼綱領はうたう。〈政治不信を招く公私混淆(こんこう)を断ち、清廉を持し、かりそめにも国民の非難を受けないよう政治腐敗の根絶と政治倫理の向上に努めなければならない〉。綱領制定から間もなく40年。自民党派閥の裏金問題を見るにつけ、この文言が一顧だにされてこなかったことが分かる

▼議員らに支給される手帳には全文が載っている。内容を知らないはずはない。綱領はこうも言う。〈疑惑をもたれた場合にはみずから真摯(しんし)な態度をもつて疑惑を解明し、その責任を明らかにするよう努めなければならない〉

▼岸田文雄首相が改めてこれを読んだかは分からない。ともかく、きのうは政倫審に出席し、やりとりを全面的に公開した。公開を渋っていた議員が、これに倣わざるを得なくなったのは間違いないだろう

▼とはいえ、やはり、と言わねばならないようだ。過去に開かれた際と同様に、きのうも疑惑の解明とは程遠い内容だった。綱領の言葉がないがしろにされる状況に変わりはない。きょうは、大規模な裏金づくりを続けてきたと指摘される安倍派幹部が出席する。

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