共産党と習近平国家主席のさらなる強権化で、減速する経済情勢を打開し、人口減少などの諸課題を解決できるのか。閉鎖性が強まったことも憂慮される。
中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が閉幕した。
2024年の国内総生産(GDP)成長率目標を前年目標と同じ「5・0%前後」とした政府活動報告などを承認・採択した。
長引く不動産不況が景気の足かせとなり、民間投資や個人消費も力強さを欠くが、積極的な財政政策で景気を下支えする方針だ。
米国との通商対立が深まる中、サプライチェーン(供給網)の強靱(きょうじん)性を高め、電気自動車(EV)など新興産業を育成する。
地方経済は新型コロナウイルスの流行で打撃を受け、不動産不況で疲弊している。
世界第2の経済大国へ発展したが、格差は拡大し、人口減少にも直面している。
国家安全を重視する習氏の方針が経済停滞を招く懸念が指摘される中、習指導部の方針が景気回復につながるかは不透明だ。
国防では、「世界一流の軍隊」実現に向けて24年の国防費を前年比7・2%増とし、軍事力の増強を図ることを決めた。
懸念されるのは、全人代で台湾の民主進歩党(民進党)政権への強硬発言が相次いだ点だ。平和統一を目指すとしながら、武力行使の選択肢をちらつかせている。
台湾海峡の軍事的緊張を高め、国際社会とのあつれきを生む言動は到底容認できない。
香港に関しても「愛国者による香港統治」の原則を堅持し、統制を強化するとしたが、市民を締めつけるべきではない。
政府機関への党の指導を明確にする改正国務院組織法を可決し、政府である国務院が党の従属機関であると法的に位置付けられた。首相の地位低下が鮮明化した。
習氏の権力基盤がさらに固まり、全人代に出席した各地方政府の代表団らも礼賛一色となった。
昨年7月の改正反スパイ法施行に続き、今年2月には改正国家秘密保護法を可決した。
反腐敗闘争で政敵を排除した習氏は一段の体制引き締めで内政の動揺を乗り切ろうとしている。国民の不満をそらすかのような動きには注意が必要だ。
今回の全人代では、恒例の首相会見を取りやめた。閣僚会見などを増やすとしていたが、新型コロナウイルス禍前には十数回あったものが3回に激減した。
人権問題が指摘されるチベット自治区の代表団会議などが公開されたものの、質問で指名された多くは中国官製メディアだった。日本メディアは王毅外相の会見で質問すらできなかった。
習指導部の閉鎖性に不安を覚える。独裁的な姿勢のままでは国際社会の理解は得られない。
