紀元前18世紀ごろに制定されたハンムラビ法典には、こんな規定があった。商人が穀物を貸借契約に供したときは33・3%、銀の場合は20%の利息を徴収する
▼これを超えて利息を取った場合、商人は与えたものを失うという規定もあったので、金利の上限規制だったようだ(板谷敏彦「金融の世界史」)。モノやお金を借りる場合の借り賃、すなわち「金利」という考え方は、これほど古くから存在した
▼銀行にお金を預ければ、なにがしかの利子が付く。その常識からすると何とも不思議だ。民間銀行が日銀に預ける当座預金の一部にマイナスの金利を適用し、手数料を課す「マイナス金利政策」である
▼モノやサービスの価格が下がるデフレからの脱却を目指し、2016年に日銀が導入した。銀行が企業や家計への融資を増やそうと金利を低くする効果を期待した。異例の措置に踏み切ったのは、それだけ日本経済の傷みが激しかったからだろう
▼どれほどの効果があったかは専門家の判断に任せるとして、日銀はきのう、この政策の解除を決めた。今春闘で大手企業を中心に高水準の賃上げが達成される見通しになったことなどが背景にあるという
▼経済の好循環を実現するには、賃金と物価がそろって上がることが必要だ。40代以下の世代は、賃金のベースアップなど知らなかったという人も多い。真にデフレから脱却するには、何事も安い方がいいという意識を変えねばならない。異例の政策の終焉(しゅうえん)はその第一歩になるだろうか。