人生を台無しにするギャンブル依存症の怖さを、まざまざと見せつけられた。国や自治体はもちろん、社会を挙げて予防策、患者の支援策に取り組みたい。
米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手の元通訳・水原一平容疑者が、銀行詐欺容疑でロサンゼルスの連邦地検に刑事訴追された。
違法賭博の借金を返済するため、大谷選手の口座から胴元側に1600万ドル(約24億5千万円)以上を不正に送金したとされる。
連邦地検は、水原容疑者は送金のため、大谷選手を装って銀行に電話した疑いがあるとした。大谷選手の口座の連絡先が水原容疑者の電話番号などに変更された疑いもあるという。
大谷選手は被害者として、事件との関与は正式に否定された。信頼していた水原容疑者に裏切られたショックを乗り越え、さらなる活躍を期待したい。
驚くのは、水原容疑者が賭けに負けた金額の大きさだ。
連邦地検によると、水原容疑者は2021年9月に違法スポーツ賭博を始め、24年1月までの2年余りで損失は総額4067万8436ドル94セント、日本円にして約62億3500万円に上った。
この間、賭けた回数は約1万9千回に達し、1回当たり約200万円をつぎ込んでいた。
負け分を取り返そうとさらに賭けを続け、雪だるま式に損失を増やしていった様子が浮かぶ。
水原容疑者自身も認めているというギャンブル依存症の恐ろしさに背筋が凍る思いがする。
ギャンブル依存症とは賭け事にのめり込み、衝動を抑制できなくなる精神疾患だ。
日本国内ではカジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)の開業準備が進んでおり、依存症患者の増加を懸念する声もある。
水原容疑者がのめり込み、米国で急成長しているオンラインのスポーツ賭博は、日本でも経済産業省が21年にまとめたスポーツクラブ産業についての提言で触れられ、慎重に議論されている。
ギャンブルで多額の借金を背負い、築き上げた人間関係を壊すような人が増えないよう対策を進めることは急務だ。
国は18年にギャンブル依存症対策基本法を施行し、19年には対策の基本計画を閣議決定した。
本県も22年、依存症の予防や治療支援などを進める県ギャンブル等依存症対策推進計画を策定している。同計画によると、依存症が疑われる人は県内で約4万人に上る。国内全体では推計300万人以上とされている。
国や自治体は啓発活動に力を入れ、予防や相談、治療支援などに一層尽力してほしい。
既に自覚があるという人はギャンブル依存症が病気であることを認識し、最寄りの保健所などに相談してもらいたい。
