ガザでの死者は3万5千人を超え、人道危機もますます深まっている。ラファへ本格侵攻すれば、民間人への被害拡大は必至だ。イスラエルは侵攻を即時に停止し、休戦交渉に応じるべきだ。

 パレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスと戦闘しているイスラエル軍は、ガザ最南部ラファ東部で限定的な地上作戦を実施し、拡大している。

 エジプト境界にあるラファ検問所のガザ側を掌握した。空爆も続け、市街地に戦車が進軍しているとの情報もある。

 イスラエルのネタニヤフ首相はラファでの作戦は「数週間続く」としている。住民に退避を要求しているが、ラファには避難民ら約120万人が密集しており、避難は容易ではないだろう。

 車で移動中の国連職員2人も死傷した。現地スタッフ以外の国連職員の死亡は、ガザで戦闘が始まった昨年10月以来初めてになる。

 攻撃がイスラエルによるものか、ハマスによるものか明らかではないが、戦闘の拡大が招いた悲劇であることは間違いない。

 国際社会は、イスラエルに本格侵攻を踏みとどまるよう圧力をかけ続けねばならない。

 イスラエルの最大支援国である米国のバイデン大統領は、ラファに本格侵攻した場合、「武器を供与しない」と異例の強い表現でイスラエルに回避を求めた。既に一部の弾薬の輸送を停止した。

 しかし、ネタニヤフ氏は米国の意向にも反発し、「単独でも戦う」と強硬姿勢を崩していない。

 これに先立ち、イスラエルはハマスが受け入れた休戦案を拒否した。イスラエルが拒む「戦闘終結」が明記されるなど要求とかけ離れているとしている。

 ネタニヤフ氏は、ハマス壊滅まで戦いをやめないと明言した。背景には、ハマス壊滅や人質解放の目標を達成できないネタニヤフ氏に対し、国内で退陣圧力が強まっていることがあるとみられる。

 連立を組む極右勢力は、ハマスに譲歩した休戦案に合意すれば連立を離脱すると警告しており、合意が政権崩壊につながりかねないこともある。

 だが、首相の保身のために戦闘が続き、子どもや女性ら多くの民間人が犠牲になり続けることはあってはならない。

 イスラエル軍が掌握したガザ北部では、ハマスが部隊再編の動きをみせた。壊滅がいかに難しいかを示している。

 米国では、イスラエルによるガザ攻撃に抗議するデモが全米の大学に拡大し、世界各地に拡散している。イスラエルの攻撃は「虐殺だ」などと学生らが怒りの声を上げるのは理解できる。

 バイデン氏は、イスラエルへの説得をさらに強めねばならない。日本や国際社会は停戦につながる有効な手だてを講じるべきだ。