世界中の企業や団体が頼るソフトのシステム障害が、例のない大混乱をもたらした。特定の企業に集中依存しているデジタル社会の危険性が、露呈したといえる。
原因企業は再発防止に万全を期し、安全で安心できるデジタル社会を築いてもらいたい。
米IT大手マイクロソフト(MS)の基本ソフト(OS)ウィンドウズを搭載している端末で大規模なシステム障害が発生した。
米IT企業クラウドストライク社が提供するセキュリティーソフトが原因で、アップデートに欠陥があったためだ。
サイバー攻撃への防御力を高めるため、ソフトの更新作業を始めた直後に、ウィンドウズを搭載したパソコンなどに、画面が青くなり、動作しなくなるといった異常が頻発した。
MSは、電子端末の推定850万台がシステム障害の影響を受けたと発表した。
各国の空港や鉄道、銀行、病院などのシステムに問題が生じ、交通や金融といった基幹インフラに大きな打撃を与えた。
顕著な影響を受けたのが、航空会社だ。航空情報サイト「フライトアウェア」によると、世界で4万便超が遅延し、5千便以上が欠航した。国内では、日本航空系の格安航空会社ジェットスター・ジャパンが欠航した。
このほか世界各地の病院や行政でサービスが滞り、英国ではテレビ放送が一時中断した。史上最大級のシステム障害と指摘される。
1日余りで収束に向かったが、MSのサービスが、社会のあらゆる分野で使われているという影響の大きさ、危うさを改めて認識せざるを得ない。
近年はリモートワークが増え、この接続の欠陥を狙って身代金要求型ウイルスに感染させるサイバー攻撃などの被害が拡大しており、端末側でのセキュリティー対策が欠かせない。
クラウドストライクは、この流れに乗って顧客基盤を拡大し、世界の大企業など3万近くが採用しており、混乱も広がった。
IT企業はさまざまなデジタルサービスを提供し、今や生活に欠かせないものが多いだけに、ひとたび障害が発生した場合のダメージは大きい。
完全な代替手段を用意するのは難しいとされ、早期に復旧できるかはIT企業側の対応に左右されるのが実情という。
それだけに、IT企業側の責任は重大だ。
MSとクラウドストライクは今回の事態を重く受け止めて、二度とシステム障害を起こさないよう対策を急がねばならない。
MSに限らず、これまでもシステム障害は相次いでいる。利用者側もIT化により利便性が高まる一方で、トラブルが生じることを常に念頭に置いておきたい。