火山の噴火災害が、本県とも無関係ではないことを改めて胸に刻む機会にしたい。歴史から学ぶ火山防災が必要だ。
糸魚川市と妙高市にまたがる標高2400メートルの焼山で、登山者が亡くなった1974年の水蒸気噴火から28日で50年となった。
噴石で登山中の大学生3人が犠牲になったほか、土石流により麓の糸魚川市早川地域を中心に農業被害などが出た。
焼山は本県で唯一、気象庁が24時間体制で監視する活火山だ。約3000年前の誕生とまだ若く、大小の噴火を繰り返してきた。
2016年にも小規模な水蒸気噴火が起き、火山活動が活発化したとして、山頂から半径1キロが18年11月まで立ち入り禁止になったことは記憶に新しい。
登山者ら58人が死亡、5人が行方不明となった14年の御嶽山(長野・岐阜県)や、スキー客ら12人が死傷した18年の草津白根山(群馬・長野県)の噴火も水蒸気噴火で、いずれも突然噴火した。
水蒸気噴火は前兆が少なく、現在の観測態勢では予知しにくいという。火山を訪れたときは、常に注意が欠かせない。
一方、火砕流や溶岩流などを伴い、広範に被害を及ぼすマグマ噴火は、焼山で有史以降、4回起きている。火砕流が糸魚川市の早川を流下し、約20キロ先の日本海に達したこともある。
焼山では1773年が最後とされる。最新の研究では、1400年代が最後という説もある。数百年前の歴史から学ばなければ対策を講じることはできない。
県や地元自治体、関係機関で組織する新潟焼山火山防災協議会は、甚大な被害が起こりうるとしてマグマ噴火に備えている。
糸魚川市の早川沿いには現在、約3000人が暮らしており、地域住民は避難訓練を繰り返して防災意識を高めている。24時間体制の監視で噴火の兆候をつかみ、確実に避難できるように訓練を生かしてほしい。
焼山は国内屈指の豪雪地でもあり、火砕流などが雪を溶かし、大量の水が土砂を巻き込んで流れ下る「融雪型火山泥流」が起きる危険性もある。
死者・行方不明者144人が出た1926年の北海道・十勝岳の噴火では、泥流で犠牲になった人が多かった。
国内には111の活火山があり、本県では焼山の他に妙高山も含まれる。他の火山で起きた被害も教訓に対策を講じておきたい。
大噴火があると大きな被害が生じる一方で、火山がもたらす恵みは多い。溶岩が大地をつくり、湖を生み、温泉が湧く。雄大な自然は地域の誇りでもある。登山やスキーで訪れる人は大勢いる。
自然の脅威に対する警戒を忘れることなく、火山とともに暮らす知恵も育んでいきたい。
