〈非人道的兵器? 人道的兵器ってあるんですか〉。戦争の本質をついた指摘に胸をえぐられる思いがした。本紙投稿欄「ワンショット」に先月掲載された作品である
▼非人道的な兵器とは、軍人と民間人の区別なく無差別に攻撃する武器を指すようだ。大規模な被害が想定されるものとしては核兵器のほか、生物・化学兵器や燃料気化爆弾、クラスター(収束)弾などが挙げられる
▼対人地雷の理不尽な残虐性もよく指摘される。多くの国や地域で、戦闘とは無関係の市民が犠牲になってきた。ウクライナでもロシア軍が撤退した地域に多くの地雷が残されているらしい
▼これらの兵器が人の道に外れた存在であるのは言うまでもない。ただ、それ以外の兵器はどうだろう。誰かを傷つけ自由を取り上げ、命を奪うことさえできる力を持つのが兵器である。自衛のため、どうしても必要になる場面もあるかもしれないが、そもそも兵器は非人道性から逃れられない
▼ロシアによるウクライナ侵攻は「力による現状変更」だと各国から批判されている。他者の意思に反して現状変更を強いる力の裏付けとなるのが兵器だ。「力による現状変更」の「力」とは兵器の威力にほかならない
▼ウクライナ市民に対する殺りくが次々に明るみに出ている。犠牲者は相当な数に上るようだ。拷問の跡がある遺体もあるといい虐殺の様相が濃い。兵士や軍隊が狂気に走る恐れは、すべての戦争にある。人道的な兵器がないように、人道的な戦争も存在しない。