国がどれだけ本気で取り組み、実効性ある対策につなげられるか注視したい。国は再稼働ありきで急ぐのではなく、立地自治体の視点に立ち、真摯(しんし)に課題と向き合ってもらいたい。

 政府は6日、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働を目指し、原子力関係閣僚会議を開いた。

 閣僚会議が個別の原発について議論するのは異例で、官房長官や経済産業相らで構成する会議のメンバーを拡大し、岸田文雄首相が先頭に立つ。

 政府挙げて取り組む姿勢を示し、再稼働に必要な知事の同意につなげる狙いだ。再稼働に前のめりな首相の姿勢がうかがえる。

 事故時の対策を巡っては、県が6月に、原発から放射状に6方向へ伸びる道路の整備や、放射性物質の侵入を防ぐシェルターの設置などを政府に要望していた。

 閣僚会議で首相は避難路の整備などを示し、地元の不安や要望を踏まえ対応するよう指示した。

 避難路やシェルターの整備に必要な予算を、県の負担がない国費での整備も念頭に確保するとしている。いかに具体化させるのか、目を凝らしたい。

 花角英世知事は最近、再稼働判断のための課題として、原発の安全性、必要性、東電への信頼性の三つを論点に挙げている。

 この点に政府が今後、どう対応するかも焦点となるだろう。

 安全性では避難路整備も一つだが、建物や道路が損壊した状況での避難や、5~30キロ圏の住民に求める屋内退避の在り方など、検討すべき課題が多岐にわたる。

 住民がしっかり避難できる対策が講じられなくてはならない。

 原発の必要性では、政府は人工知能(AI)向けデータセンターや半導体工場の建設に伴う電力需要の増加のほか、火力発電に過度に依存した東日本の脆弱(ぜいじゃく)な電力供給体制の強化を理由に挙げる。

 県内では今夏、国による県民説明会が開かれたものの、必要性への理解が広がったとは言えない。

 政府は年末にかけて、説明会などに集中的に取り組むとした。理解を深めるには、十分に時間を割いた丁寧な説明が不可欠だ。

 東電の信頼性については、福島第1原発事故を起こした当事者であり、柏崎刈羽原発で不祥事を続発した東電が原発を運転していいのかという課題がある。

 福島第1原発で先月、溶融核燃料(デブリ)の取り出しがミスで中断した件では、東電社員が作業を下請け任せにしていた実態が判明した。東電の管理体制はなおも甘く、信頼性を疑わせるものだ。

 国は事業者への指導、監督責任を果たさねばならない。

 岸田首相は再稼働にこだわりを見せるが、退陣間際の指示では実現性に疑問符が付く。

 県にはぶれることのない県民本意の冷静な対応が求められる。