ウイルス禍で最初の緊急事態宣言が発令されたのは、2年前の4月7日だった。再拡大の気配もあり、まだ収束どころでない。当時の高校2年生は休校やリモート授業が続いた。青春とはほど遠い巣ごもりの日々に耐えた

▼この春、その多くが18歳となって巣立った。改正民法の施行で一人前扱いである。入社式や大学入学式などは、さながら成人式も兼ねたようだ。18歳の新人は「大人の自覚」を重ねて求められていることだろう

▼18歳で受けた大人社会の洗礼を思い出す。大学入学式の帰り道、都会のお兄さんに祝いの声をかけられた。手にはクーポンの束。聞けば、大学周辺の映画館や食堂、書店で半額割引が受けられるという

▼「たった5千円。安くて楽しいキャンパスライフを」。新潟出身の世間知らずは疑うことを知らない。「もう1冊買います」。学生寮の同室者に贈ろうと、追加のおねだりまでした。クーポンは偽造で、使える代物でなかった。18歳の苦い薬、いまでは笑いのタネだ

▼詩人の谷川俊太郎さんは18歳当時、日記のように詩を書いた。「水素爆弾の記事のとなりに/雛祭(ひなまつり)のことがのっていた/(中略)腹をたてながらつくづく恐ろしかった/地球 地球 宇宙 雛祭-/そしてそれより以上に悲しかった」(「かなしみ」)

▼成人するとは、ワクワク、ドキドキ感を失うこと-。そんな皮肉を言う人もいる。「純真と夢は一生ものだよ」。卒寿90歳の谷川さんなら、今年の18歳にこんな祝いの声をかけるのだろう。

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