復旧途上の能登半島地震の被災地がまたも大きな打撃を受けた。未曽有の被害に苦しむ被災者のために手厚い支援を急ぎたい。

 元日の地震で大きな被害があった石川県輪島市や珠洲市などで、21日から22日にかけて記録的な豪雨が降り、河川の氾濫や土砂災害が相次いで発生した。

 24日時点で8人が亡くなり、2人が行方不明になっている。ほかに県が安否不明者として複数の氏名などを公表している。

 自宅にいて濁流にのまれたとみられる人もいる。生存率が低下するという「72時間」が経過した。一刻も早く見つけ、救出したい。

 地震から8カ月以上が経過したとはいえ、地盤には亀裂が入ったままで、山腹などの土砂が豪雨で大量に流れ下り、土砂崩れや土石流を発生させた。

 識者は「地震と大雨という二つの要因が時間差で生じた複合的な災害だ」と指摘している。

 切ないのは、地震からの生活再建がままならないうちに、また被災した人がいることだ。

 地震の被災者向け仮設住宅団地は6カ所で床上浸水した。用地不足から、大雨で浸水するリスクのあるエリアに建設せざるを得なかったことが背景にあるという。

 しかし、ようやく入居できたのに家財道具や思い出の品々が泥水に漬かり、再び避難せざるを得ない状況に置かれるのでは、被災者の心理的、経済的な負担は大きく、落胆は察するに余りある。

 自治体は避難を呼びかけるだけでなく、リスクを回避する対策を急いで考えなくてはならない。

 相次ぐ災害で「心が折れそうだ」と話す被災者もいる。先が見えない状況が続き、不安やストレスを抱える人は多いだろう。

 心身に不調を来さないか心配だ。心のケアを含め、物心両面のきめ細かな支援が求められる。

 一日も早い生活再建には、インフラの復旧などで、全国の自治体や業者の協力も欠かせない。

 地震による断水は5月末におおむね解消していたが、豪雨でまた発生した。生活用水に支障があると日常生活を取り戻せない。

 集落によっては、道路の崩壊などで孤立が長期化する恐れがある。被災地以外の宿泊施設に避難する「2次避難」も必要になる。

 今回の豪雨は、台風の影響で秋雨前線に向かって暖かく湿った大量の水蒸気が流れ込んだことに加え、日本海の海面水温が高いことも要因だったとみられている。

 村上市でも今回、9月の1カ月分を上回る記録的な雨が降った。

 気象庁によると、気圧配置は予想通りだったが、線状降水帯など非常に極端な現象は予測できず、難しさをうかがわせた。

 異常気象は普遍的になっている。地震や豪雨といった別々の災害が、同時期や近接した時期に起きることも想定して備えたい。