批判や不満を含め、広く市民の声に耳を傾け、新たな気持ちでスタートを切ってほしい。
長岡市長選は、現職の磯田達伸氏が新人の会社役員高橋宏幸氏を破り、3選を果たした。
市政の安定性、継続性を市民が選択したといえる。成果を積み上げ、県内第二の都市の活性化を実現してもらいたい。
磯田氏は多くの市議の支援を得て、経済界も支えるなど優位に戦いを進めた。ところが、得票は前回から1万7千票余り減らした。一方、高橋氏は総投票数の4割を超える票を獲得した。
刷新への期待感など複数の要因が考えられる。磯田氏は高橋氏の得票を批判票として謙虚に受け止め、今後の市政運営に生かしていく姿勢が求められる。
選挙戦では、深刻化する人口減少対策や経済、地域活性化策で議論が交わされた。
他自治体と同様、市では死亡が出生を上回る自然減と、転出が転入を上回る社会減が同時に進む。
磯田氏は都市機能を大きくする必要性を強調し、「選ばれるまちとなることで人口減少に歯止めをかけたい」と訴えた。施策の具体化が急がれる。
特に合併地域は減少が顕著で、「疲弊している」との声が根強い。本紙のアンケート調査でも合併後の市政運営に満足していない市民の存在がうかがえる。
地域の意向を的確に把握し、市中心部と周辺地域とのバランスがとれた振興策の実現に、一層力を尽くすべきだ。
子育て分野では、発達に課題がある子どもへの対応に注力し、不登校対策を含め「トータルで子育て日本一を目指す」とした。ぜひ実現してほしい。
産業面では「イノベーション」をキーワードに、デジタル技術をはじめ変化の激しい時代への対応を掲げた。起業支援や産学連携による新事業創出はなお模索が続くが、着実に進めてもらいたい。
アンケートでは、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働問題についても、有権者の関心が高かった。
長岡市は同原発から半径5~30キロ圏の避難準備区域(UPZ)に大半が入る。磯田氏は県内全市町村でつくる「原子力安全対策に関する研究会」代表幹事でもある。
磯田氏は「リスクと不安だけを負わされている」とし、「市民の不安が解消されない限り再稼働すべきではない」との姿勢を貫く。
再稼働に向けた国や東電の動きが加速している中、有権者は磯田氏の言動に注目している。
県内2番目の人口を抱え、中越地方の中心である長岡市は、地域をリードしていく責務がある。
まちづくりの指針となる次期総合計画の策定も控え、3期目は磯田氏にとって仕上げとなる。地域の明るい未来につながるビジョンを示してほしい。