政治や経済、文化など幅広い分野で交流が多い隣国の韓国。新潟県の経済活性化に向け、新潟経済同友会の国際戦略委員会が10月下旬、韓国を訪れ、グローバル物流の中心港を目指して整備が進む釜山新港などを視察した。国際潮流や市場変化の中で韓国はどのような取り組みを進めているのか。訪問団に同行し、新潟の拠点性向上と県内企業の海外展開に向けた可能性を探った。(報道部・佐藤雅樹)

 首都ソウルから南東約320キロに位置する韓国最大の港町・釜山。市街地に隣接する港湾のコンテナヤードには各国のコンテナが積み重なり、巨大なクレーンが林立。海運物流の中心基地であることを実感した。

 釜山港は、1876年に韓国初の国際港として開港した世界的な物流ハブ港湾だ。韓国の輸出入貨物と他国の積み替え貨物を処理する。世界三大幹線航路上に位置し、150カ国以上の港湾をつなぐグローバルネットワークの拠点となっている。

 北東アジア最大の積み替え中心港の新港、アジア域内船社の拠点港湾である北港、水産物流基地の甘川(カムチョン)港など、それぞれ特化した港湾施設を誇る。

 北港はこれまで物流機能の主要拠点で国内最大のコンテナ取扱港だった。だが貨物需要増加に加え、約15メートルの岸壁水深がコンテナ船の大型化に対応できないなどの課題があり、1995年に北港から25キロほど西に位置する新港の開発が始まった。

各国のコンテナが積み重なる釜山新港のコンテナターミナル。荷役設備の自動化などが進む=韓国・釜山広域市

▽北東アジアの物流に変化…投資誘致で優位性維持へ

 近年、北東アジアを取り巻く物流環境が変化し、港湾間競争で優位性を維持するため、韓国は新港に外国企業などから投資の誘致を進めている。

 同友会は、釜山港の運営・管理を担う「釜山港湾公社(BPA)」広報館と、新港の韓進釜山コンテナターミナル(HJNC)を訪問。広大なコンテナターミナルを見学した吉田至夫筆頭代表幹事は「各国の民間企業などがコンテナターミナルの運営に関わり、港を大きくするやり方は素晴らしい。国際化がさらに進むだろう」と感心した様子で話した。

 新港は17〜20メートルと大水深で、コンテナ船の大型化にも対応。貨物の混雑解消に向け、荷役機械の増強や自動化などインフラを拡充し、作業のスマート化を図っている。

 BPAの担当者は「近海航路の北港と基幹航路の新港の間でトラックによる輸送が多く課題となっているが、機能が集約されることでコスト減が見込める」と説明した。

▽力増す中国…新潟県の拠点性向上へ「日韓協力必要」

 日韓の産業構造は似ており、自動車や船舶部品、電気機器など、産業内貿易も多い。韓国貿易協会の2023年の国別輸出入・貿易収支データによると、韓国にとって日本は輸出先で第4位、輸入先で第3位の貿易相手国となっている。

 新潟県関係の定期航路では、新潟港から週7便、直江津港から週2便が、釜山に寄港する。企業・荷主の利便性を高め、航路の利用拡大が進めば、新潟県の拠点性向上につながる。

新潟東港

 近年の釜山港の大規模な開発は、上海港をはじめ中国の港湾整備が脅威となっていることが背景にある。

 日本港湾協会のデータによると、世界の港湾別コンテナ取扱量で、釜山は2000年の3位から22年は7位に低下。トップ10のうち七つが中国港湾で、上位を独占している。

 視察に参加した県立大北東アジア研究所の新井洋史副所長は「日本経済の足踏みもあるが、日本発着で釜山での積み替え貨物量も鈍化傾向にある」と指摘。「拠点性強化には日韓の協力が必要だ。整備に見合った取扱量を確保できるか、韓国の動向を注視したい」と話した。

◆韓国で人気高まるスノーピーク、ソウル近郊にキャンプ場も

 韓国には多くの日本企業が進出している。日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所などによると、日本の進出企業数は2024年8月時点で約770社。ソウル事務所の前川直行所長は「日本の対韓直接投資は12年からピークアウトし、進出企業数にほぼ変化はない」と説明する。近年の傾向としては「両国の人的・文化交流の活発化を背景に飲食やコンテンツ、小売りなどで日系企業の進出も出始めている」とした。

 新潟県関係では、アウトドア製品企画販売のスノーピーク(三条市)も韓国に進出している。1996年に米国市場をターゲットに海外事業進出を本格化させ、2001年に韓国市場に参入。現地の代理店を通じて取引していたが、ビジネス機会の増加に伴い、08年に子会社「スノーピークコリア」を立ち上げた。

 韓国国内で展開する直営店舗の販売好調を背景に、2023年にはソウル近郊の京畿道(キョンギド)に韓国初となる直営キャンプフィールド「Snow Peak EVERLAND Campfield」を開設した。

 約6万6千平方メートルの敷地内には、キャンプ空間に加えアウトドアグッズやアパレルが購入できる直営店、韓国初の展開となる「Snow Peak Cafe&Dining」もあり、複合的にアウトドア体験を楽しめる。

スノーピークコリアが運営するキャンプフィールドを視察する新潟経済同友会のメンバー=韓国・京畿道

 韓国ではアパレルを中心に...

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