NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」のヒロインは、食べるのが大好きな沖縄の少女だ。炒め物のゴーヤーチャンプルーに豚肉入りのそば。沖縄ならではの料理を家族と満喫しつつ、まだ見ぬ東京の食べ物にあこがれる

▼わが身にも、子どものころ「食べたーい!」と焦がれたものがある。絵本「ぐりとぐら」に登場する黄色いカステラだ。新潟市美術館で開催中の「絵本原画の世界2022」で展示されている。水彩とインクでふっくらと描かれたカステラのうまそうなこと

▼絵本の主役は、双子の野ねずみきょうだいだ。〈ぼくらの なまえは ぐりと ぐら このよで いちばん すきなのは おりょうりすること たべること〉。森で大きな卵を見つけたぐりとぐらは力を合わせ、大きなカステラを焼き上げる

▼発表されたのは1963年のこと。著者の中川李枝子さんは保育士を務めていた。ヒントになったのは、トラがグルグル回ってバターになる古い外国の童話である。このバターでホットケーキを作るお話は園児に大人気だった

▼「ホットケーキよりももっとおいしいもの」を登場させて子どもたちを驚かせたい。そう思って当時、最高のお菓子だったカステラのお話を書いたと、月刊誌のインタビューで振り返る

▼絵は妹の山脇百合子さんが担当した。「ぐりとぐら」には、仲間の動物たちとカステラを頰張る場面が描かれている。どの顔も幸せそうだ。おいしいものは、分け合って食べるともっとおいしくなるのだろう。

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