濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」が米アカデミー賞をはじめ海外で高く評価されたことは誇らしかった。しかし日本映画を取り巻く環境は海外に比べて貧弱と言われて久しい

▼分かりやすい指標の一つは製作費だ。「ドライブ-」は1億円余りとされる。アカデミー賞にノミネートされた作品の多くより1桁少ないらしい。日本人が年間に映画館で見る本数は平均で1本余りで、米国や韓国よりずっと少ない

▼映画製作に対する公的支援も海外に比べると乏しい。フランスには小規模な映画館に対する補助制度がある。商業映画か芸術作品かを問わず、自国文化を発信する手段として映画を位置付ける国は多い

▼地方を拠点に活動する映画監督と話す機会があった。新作「犬ころたちの唄」上映のため新潟市を訪れた前田多美さん(38)は広島市在住。俳優として「ドライブ-」にも出演した。日本映画は「お客が入るか入らないかの尺度ばかり。ただの消費物として扱われている」と表情を曇らせる

▼一方で、邦画界では独立系を含めて多くの作品が作られている。前田さんの「犬ころ-」では、実在する広島の音楽ユニットの3人が兄弟の役柄を演じ、家族の物語を描く。ロケをはじめ、地元にこだわった

▼その土地の景色や生活感を徹底して描くと、その場所の魅力を地元の人が再発見してくれる。映画を見て、作品の舞台へと足を伸ばす人もいる。映画の持つ力を実感するという。新潟人が新潟を舞台に撮った作品も見てみたい。

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