ホーホケキョ。朝、寝床であのさえずりが聞けなくなってもう何年たつだろう。庭で梅の花が散り果てるころ、寂しくなる。20年ほど前に近所のやぶが刈られた。ウグイスはすみかを追われ、その初音はほとんど聞けなくなった

▼さえずりは、オスの求愛の声、縄張り宣言でもあるという。あの節回しが恋しくて新潟市の角田山を登った。「山笑う」。この春の季語は、新緑に響く野鳥の合唱だろうか

▼ケキョケキョケキョ-。ウグイスの谷渡りという長鳴きも届く。1日に2千回以上鳴くという。あの絶妙なさえずりは、前半の「ホーホ」で息を吸い「ケキョ」で吐き出す。ある愛鳥家が執念で観察を続け、そんな生態に迫った(松田道生「鳥はなぜ鳴く? ホーホケキョの科学」)

▼ウグイスは昔から飼い鳥として美声を競った。声のいい鳥のそばで育てる「付子」という発声訓練もあった。大正時代、京都の名鳥1羽の値段が総理大臣の月給の30倍だったという

▼「さえずり」は英語で「ツイッター」。世界を代表する短文投稿サイトと同じ名前だ。世界一の富豪、イーロン・マスク氏が運営企業の買収に動いている。5兆円以上というから「さえずり」の値段も桁違いだ

▼言論の自由を重視するためと言う。だがデマや差別、中傷対策をどう進めるかは不透明だ。人工衛星を活用した通信システムをウクライナに提供する実業家である。まずは爆音が小鳥のさえずりをかき消すような惨劇を止めること。その支援に全力を注いでほしい。

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