柏崎市の広報誌や書籍の点訳を手がけている「柏崎点訳奉仕会」の坂爪文子会長=柏崎市豊町
柏崎市の広報誌や書籍の点訳を手がけている「柏崎点訳奉仕会」の坂爪文子会長=柏崎市豊町

 「細く長く点字に携わっていきたい」。新潟県柏崎市の点訳ボランティア団体「柏崎点訳奉仕会」の会長、坂爪文子さん(69)=柏崎市=はそう語る。会は、自然災害や原発事故に住民が取るべき行動などを示した柏崎市の「防災ガイドブック」2種類と「津波ハザードマップ」を点訳した。視覚障害がある人に、いざという時の備えをしてほしいと思ったからだ。「自分が点訳した冊子や本を誰かが読んでくれている、と思うとやりがいを感じる」と、点訳に携わる喜びを語る。

 奉仕会は1966年に設立された。市の広報誌「広報かしわざき」や書籍などの点訳を手がけている。会員は現在、柏崎市などに住む25人。若い世代にも点字を身近に感じてもらおうと、柏崎市内の小中学校で点訳教室も開いている。

 旧鵜川村(現柏崎市女谷地区)に生まれた。市内の高校を卒業した後、数社で経理や人事業務を担当した。

 「困っている誰かの役に立ちたい」という思いを抱いていたが、仕事の傍ら、父親の介護に尽くす生活を送っており、なかなか踏み出せなかった。「自宅で黙々と作業ができる」と点訳に興味を持った。

 柏崎市が主催する「点訳奉仕員養成講座」に通い始めた。講座では点字についての基礎知識などを学び、43歳の時に奉仕会に加わった。

 奉仕会で、25年以上雑誌や書籍の点訳に携わってきた。県視覚障害者情報センターから依頼を受けて、専門書や辞典、絵本まで幅広い分野を請け負っている。「それぞれの本を楽しみに待っている人がいるので、頼まれた仕事は断らない」と心がけている。2022年には奉仕会の会長に就任した。

点字一覧表について確認する柏崎点訳奉仕会のメンバー

 一般には、なじみの薄い点字だが、奉仕会には毎年新しいメンバーが入ってくるという。働きながら参加する人もおり、会長として「意欲的な人が多く、頼もしい」と喜ぶ。ベテラン会員と協力して後進の指導にも力を入れ、「固有名詞や住所などの重要情報は、間違えないように念入りに確認してほしい。正確な点訳を第一に心がけてほしい」と指導している。

 奉仕会は柏崎市が作成し、...

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